なんぽ歯科だより
2020.05.18[バイトプレート(咬合挙上板)とは?]深い噛み合わせ(過蓋咬合)に対して使用する矯正装置
バイトプレート(咬合挙上板)とは?
上の歯の噛み込みが深く、下の歯が見えない(噛み合わせが深い)状態のことを「過蓋咬合(かがいこうごう)」といいます。過蓋咬合を伴う歯並び・噛み合わせの矯正治療においては、歯の前後的移動とともに垂直的にも移動させる必要があります。
その際に使用される装置の一つとして「バイトプレート(咬合挙上板)」があります。バイトプレートは、可撤式(取り外し式)床矯正装置で、主に混合歯列期から永久歯列期の過蓋咬合の治療に用いられます。
バイトプレートの種類
バイトプレートの種類としまして、いわゆるリテーナータイプの床装置に水平板を付与したものが一般的に用いられますが、リンガルアーチといわれる固定式装置に付与したものなどもあります。
マルチブラケット装置による本格矯正治療の前準備、特に下顎前歯が上顎前歯の舌側歯頚部に当たっている上顎前突症例において、前歯の干渉を防いで歯の後方移動を可能にするほか、マルチブラケット装置との併用も可能です。
また、単純に咬合挙上の目的以外に、顎機能異常の診断や顎関節症の治療装置である「スプリント」としても用いられ、顎関節症状の軽減や歯ぎしり、食いしばりの防止にも効果があります。
バイトプレートの作用機序
作用機序としまして、閉口時に上顎のベースプレート前方部の平坦な水平板に下顎前歯切縁が接触することで上下顎臼歯部が2~3mm離開します。その結果、低位にある下顎大臼歯部は萌出が促されて咬合が挙上し、下顎前歯部がわずかに圧下することで、オーバーバイトが減少、いわゆる噛み合わせが浅くなります。上顎大臼歯部は装置によって固定されているため、変化は生じないとされています。咬合挙上に伴い、前下顔面高の増加も見られます。
装置使用の際の注意点
本装置は、食事のとき以外は長時間使用することが基本です。装着して、噛みしめ、タッピングを行って頂きます。患者様が口腔周囲筋肉の疲労感を訴える場合には、咬合挙上量の過大が原因と考えられるため、水平板を削合し、挙上量を調整します。使用状況が良い患者様の場合は、下顎前歯との接触によって水平板に摩耗が生じ薄くなるため、上下大臼歯間の状況によっては水平板の再構築が必要となります。
通常は、装置装着後、咬合挙上(噛み合わせが浅くなる)の効果は約3ヶ月で現れてきますが、後戻りを考慮し、6~12か月は使用することが望ましいです。1年以上使用しても効果が現れない場合は、患者様の使用状況、または装置の設計に問題がある可能性があります。
参考文献
新版 プロフィトの現代歯科矯正学
チェアサイド・ラボサイドの矯正装置ビジュアルガイド