新百合ヶ丘駅徒歩4分の矯正歯科なんぽ歯科クリニック 新百合ヶ丘

なんぽ歯科だより

2021.03.27
【歯根吸収とは?】矯正歯科治療のリスクや副作用

当院では、矯正治療を行う上でのリスクや副作用につきましてご理解を頂いた上で、治療を進めております。

矯正治療に伴うリスクや副作用の一つに、歯を動かすことにより歯根の形が変化したり、長さが短くなることがあります。いわゆる「歯根吸収」という現象です。

矯正治療後の「歯根吸収」に関する研究論文がいくつか報告されていますので、ご紹介したいと思います 。

  

  

矯正治療によって引き起こされる歯根吸収の原因とは?

矯正治療によるリスクファクターとしまして

 ・治療期間の長さ

 ・歯の移動方向

 ・根尖の移動量

 ・歯にかける力の強さ  

 ・歯にかける力の種類(持続的か間欠的か、装置の種類、など)

が挙げられます。

  

また、個人によってもリスクファクターが異なり

 ・歯根吸収の既往がある

 ・元々の歯根の形態、長さ、形成不全

 ・薬剤の影響

 ・ホルモンの不足

 ・甲状腺や下垂体の機能低下

 ・喘息

 ・歯根の皮質骨への近接

 ・歯槽骨の骨密度

 ・飲酒

 ・外傷の既往

 ・根管治療

 ・不正咬合

 ・年齢

 ・性別

など様々な要因が挙げられます。

  

  

歯根吸収の度合いと発生率は?

歯根吸収量の平均は「2.5mm以内」が多く、全ての歯の6~13%の割合で生じています。 しかし、稀に4mmを超える、または歯根の1/3にまで達するシビアなケースも存在し、これは全ての歯の1~5%の割合で生じています。

  

  

どの歯に歯根吸収が起こりやすいの?

遺伝学的な要因や治療内容に関わらず、

上顎切歯 > 下顎切歯 > 下顎第一大臼歯

の順に歯根吸収が生じやすいと言われています。

  

  

使用する矯正装置や矯正力のかけ方の違いによって歯根吸収量に差はあるの?

・固定式装置(取り外し出来ない装置)

Light force (25g)  VS  Heavy force (225g)

→ Heavy forceの方が、歯根吸収量が多い。

  

  

・Thermoplastic appliance(マウスピースタイプ 2週間に1回交換) VS Fixed Light force(25g) VS Fixed Heavy force (225g)

→ Thermoplastic appliance とFixed Light force(25g)では歯根吸収量に差が無く、この2つよりもHeavy forceの方が、歯根吸収量が多い。

  

  

・圧下 (100g) VS 挺出 (100g)

圧下               挺出

→ 圧下の方が、歯根吸収量が多い。

  

  

・使用するワイヤーの順番

→ 使用するワイヤーの順番は、歯根吸収に影響があるとはいえない。

  

  

・ストレートワイヤー法 VS スタンダードエッジワイズ法

→ 両者に差は無かった。

  

  

・セルフライゲーション VS スタンダードエッジワイズ法

セルフライゲーション             スタンダードエッジワイズ

→ 両者に差は無かった。

  

  

・顎間ゴム(100g tipping force)1日12時間使用 VS  Continuous application 1日24時間使用した場合

顎間ゴム

→ Continuous application 1日24時間使用の方が、歯根吸収量が多い。

    

  

治療の中断期間なし(毎月連続) VS 治療の中断期間あり(途中で2~3カ月中断)

→ 治療の中断期間なし(毎月連続)の方が、歯根吸収量が多い。

  

  

・アングル分類(噛み合わせの種類)

・外傷の既往

・抜歯をして治療しているかどうか

・角ワイヤーの期間

・顎間ゴムの使用期間

→ 歯根吸収に影響があるとはいえない。

  

  

・I 期治療(小児矯正)とII期治療(本格矯正・成人矯正)の両方を受けた場合 VS

II期治療のみの場合

→ 両者に差は無かった。

  

  

・形成不全歯 VS 健全歯

→ 両者に差は無かった。

形成不全歯

  

  

・根管処置歯 VS 有髄歯

→ 両者に差は無かった。

   

  

まとめ

  

歯根吸収した歯の予後は?

過去のLevanderらの報告によると、矯正治療により歯根吸収を示した症例にて、終了後最長で25年にわたり長期経過を観察したが、歯根吸収の進行を示す所見は認められなかったと述べています。

また、Remingtonらは、重度の歯根吸収を示した歯において動揺が認められたが、機能的に問題はないと述べています。

Kalkwalfらは、歯根の吸収は歯槽骨の吸収に置き換えるとどの程度の相当量になるのかを計測した所、「根尖の3mmの吸収は、歯槽骨頂の1mmの吸収に相当する」という結果であったことから、重度の歯根吸収が生じた歯であっても、それが直接的な原因となって歯が脱落するような可能性は低い、と述べています。

つまり、矯正治療により生じた歯根吸収が、歯の寿命に直接影響を与える可能性は低いと言えます。

  

今後も当院では、エビデンスに基づく正確な情報をご提供できるよう努めてまいります。

     

  

参考文献

Belinda Weltman,

Root resorption associated with orthodontic tooth movement: A systematic review

American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedeics, 137, Issue 4, 462-476, 2010.

  

Anna Jonsson,

Long-term follow-up of tooth mobility in maxillary incisors with orthodontically induced apical root resorption

Eur J Orthod. 2007 Oct;29(5): 482-487.

  

Hamilton RS, Gutmann JL.

Endodontic-orthodonticrelationships: a review of integrated treatment planning challenges (Review). International Endodontic Journal, 32, 343-360, 1999.

  

I.B. Bender DDS,

Periapical replacement resorption of permanent, vital, endodontically treated incisors after orthodontic movement: Report of two cases

Jornal of Endodontics, 23, Issue 12, 768-773, 1997